平成元年に厚生省(現在の厚生労働省)と日本歯科医師会が提唱し、自治体や各種団体、企業、そして広く国民に呼びかけて始まった8020運動はしっかりと定着してきています。
これは周知のとおり80歳になっても自分の歯を20本以上残そうという運動です。
歯科は虫歯治療や入れ歯をつくるときに行く場所というかつてのイメージから現在では歯科も様々な専門分野があり、それぞれが専門的に研究を行い、高度の知識と技術をもって診療にあたっています。

予防歯科もその一つです。
歯を失う最大の原因は歯周病です。
年をとったら歯が抜けると思っている人も多いかと思いますが、そうではありません。
十分なケアを行わない期間が長くなるとその結果として歯が抜け落ちるのです。
8020運動の始まった当初は80歳の人で20本以上の歯を維持している人は7パーセントで残存歯の数は4.5本でした。
これが2007年には25パーセントに達しています。
これは歯の健康に対する関心が上がってきたことを示しています。
しかし歯の先進国であるスウェーデンにおいてはほぼ達成しているという事に比べるとまだまだ少なく、将来を見据えた歯への関心は歯の先進国には大きく後れをとっています。

人のライフステージに合わせて歯科においても注目すべき点が変わってきます。
妊婦さんも安定期に入ると歯科受診の必要があります。
つわりなどで歯磨きが十分できないために歯垢がたまりホルモンの影響もあり、歯肉炎をおこしやすい状態になっています。
原因となる歯垢は炎症関連物質でもあり、血液と一緒に子宮に運ばれると子宮収縮を起こし早産の原因になることもあります。
また虫歯治療なども放置しておくと、歯痛がおこった時に医薬品の使用にも制限が多くなってきます。
免疫力が落ちることにより口内炎など口腔内のトラブルの起きやすい状態にもあるのです。

生まれた後は歯科にとって重要な時期に歯科検診が行われています。
検診を受けることに始まり、定期診断を受けることを習慣づけることも必要です。
日本人は予防歯科の重要性に関心がまだまだ薄いようですが、予防歯科では口腔内の状態を様々な角度から検討して虫歯や歯周病のリスクを把握し、必要な処置をとります。
基本は定期診断でプロによる専門的なケアを受け、指導してもらった方法でセルフケアすることです。

高齢になっても自分の歯でしっかり噛んで食事をすることにより認知症のリスクを減らすことができるという研究発表もあります。
おいしく食事を楽しめることでストレスを少なくしてリラックスした生活を送ることもできます。
話す、食べる、笑うという当たり前のことが当たり前にできることが生活の質を向上させるのです。
長寿社会に暮らしている日本人にとって予防歯科の重要性を早くから認識して取り入れることが健康寿命を延ばして充実した人生を送る大きな要素となるでしょう。