訪問歯科とは、在宅診療の一つで、手足が不自由で通院困難な高齢者に対し、歯科医師が患者の自宅や入所している福祉施設などに出向いて診療を行うことを言います。
介護保険の要介護者に認定されている方の場合は、介護保険の枠組みの中で「居宅療養管理指導費」として、医療保険の対象者の場合には「訪問歯科診療料」として受けることができます。
料金はそれぞれの保険に応じた自己負担金だけを支払います。
医療保険の下の行為であれば、自己負担金は1割~3割、介護保険の下の行為であれば1割となっています。

この訪問歯科は近年、高齢者にニーズがあります。
というのも、口腔衛生の状態が悪いと、肺炎を起こすリスクが高くなるからです。
口腔衛生がうまくいかなければ、当然、口の中は細菌だらけです。
食べ物と一緒にそれらの口にとどまっていた菌が体の中に入り、悪さをするわけです。
口腔機能の維持や食物の飲み込みも歯科に関係します。
食物の飲み込みがうまくいかず、気管の方へ食べかすが入っていくと誤嚥性肺炎を引き起こします。
肺炎は高齢者の死因の上位を占めています。
このことから考えても口腔衛生、訪問歯科の大切さがわかるでしょう。

そのほか、合わない入れ歯をし続けていると口の中が傷つき、そこからばい菌が入って他の疾患に影響を与えることがあります。
通院が困難だからといって放っておくわけにはいきません。
訪問歯科を行っているところでは必要な持ち運びのできる器材を持っていくため、口の中の状態を見るだけでなく、治療も可能です。

福祉施設など歯科診療を必要とする高齢者が多いところでは、まとまった人数を診ることもあります。
かつては、体の方の不都合が優先され口腔内に関してはないがしろにされていたところがあります。
しかし、今では、歯科疾患が全身疾患に与える影響の大きさが着目されてきており、こういった訪問歯科のニーズが高まっているというわけです。
特に歯周病は経過も長く、全身疾患の生活習慣病とも関連が深く、通院が困難であれば訪問歯科を利用して経過を追っていく必要があるわけです。

一般の歯科医院でも訪問歯科を行っているところもありますが、通常の診察の合間に高齢者の居宅や施設を訪ねることになり、そうなるとその動きに制限がかかってきます。
また、持ち運びのできる器材の購入もしなければならず、コスト面でも足かせとなります。
そこで近年ではこのように増えてきているニーズに応えるため、訪問歯科を専門とする歯科医も増えてきているようです。